「定額制」という日本語を使わず、わざわざ「サブスク」と呼ぶ謎
音楽配信は、2010年代にストリーミング型が主流になった。ストリーミングは、曲ごとに金額を支払うのではない。1か月分の月額料金を支払いって、好きなだけ聴くことができる。これは「サブスク」と呼ばれている。
サブスクとは、英語の「サブスクリプション」(subscription)の略である。定期利用や定額制という意味がある。本来であれば、わざわざ英語を使う必要はない。「サブスク」などと呼ぶよりも、「定額制」「月額制」といったほうが分かりやすい。なぜあえてカタカナ語を使うのか。無駄にかっこつけているだけだろう。このようなことを続けていると、日本語がどんどん衰退していく。
ストリーミング音楽配信の市場シェア
ストリーミング型の代表的なサービスとしては、Spotify(スポティファイ)がある。Spotifyは世界市場で1位だ。2位はアップルの「Apple Music(アップル・ミュージック」、3位はAmazonの「Amazon Music(アマゾン・ミュージック)」、4位はテンセント・ミュージック。
順位 | 会社名 | 世界市場シェア |
---|---|---|
1位 | Spotify(スポティファイ) | 35% |
2位 | Apple(アップル) | 24% |
3位 | Amazon | 15% |
4位 | テンセント(中国) | 11% |
5位 | Youtube | 6% |
※カウンターポイント調べ
CDと比較したメリット
音楽配信は、CDのように「実物」があるわけではない。消費者がある楽曲を欲しいと思ったときに、24時間365日いつでも聞ける。売り切れも存在しない。わざわざCDショップに足を運ばなくてもいい。モノに対するこだわりがなければ、消費者にとって非常にメリットが大きい。
にもかかわらず、日本では当初、音楽配信が盛り上がらなかった。最大の理由はレコード会社が音楽配信に対して積極的でなかったことだ。レコード会社の主な収益源はCD販売だった。音楽配信に力を注ぐと、CDが売れなくなると懸念する関係者は多かった。
日本のレコード会社は消極的だった
音楽配信に対して積極的でなかったレコード会社だが、2004年夏ごろから、その姿勢に変化が見え始めた。その最たる例が、コピーコントロールCD(CCCD)からの撤退。CCCDとはパソコンを使ったコピーを防ぐため、2002年から導入された音楽ディスクの総称だ。
CCCDは、音楽ファンの間で急速に広まった「iPod」のような携帯型音楽プレーヤーに楽曲を取り込むことができなかった。パソコンだけでなく、カーオーディオなど一部のプレーヤーで正常に再生されない場合もあるなどの問題を抱えていた。消費者から評判が悪かった。
日本は出遅れた
音楽配信を進めるにあたって、デジタルコピーを制限するCCCDは足かせになった。日本以外では急速に音楽配信の市場が立ち上がったが、日本だけ世界の流れから取り残された。
そうしたなか、ほぼ全タイトルをCCCDで発売していたエイベックスとソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)が2004年9月、突如CCCDの採用を発止、または大幅に縮小すると発表した。
アップル革命
海外では、21世紀初頭から音楽配信は広まった。その流れをけん引したのが、アップルのiPodと音楽配信サービス「iチューンズ・ミュージックストア(iTMS)」だ。
iチューンズは、アップルが2003年4月に米国でサービスを始めた。ネットユーザーの間で瞬く間に広がった。2004年には欧州各国でも開始。絶大な人気を集めた。いわゆる「アップル革命」だ。
iチューンズ成功の理由
なぜ、それまで全く盛り上がっていなかった音楽配信サービスで、アップルの「iチューンズ」は成功できたのか。それは従来の音楽配信が抱えていた3つの問題をすべて解消したからだ。
従来の音楽配信はCDよりも音質が悪かった。ジャケットや歌詞カードも付かない。それでも価格はCDと大差がなかった。さらに曲の品揃え(カタログ)も乏しかった。
1曲1ドルの低価格
また、パソコンにダウンロードした楽曲の扱いに制約が多く不便だった。これでは誰も利用しない。
だが、iチューンズは1曲99セント(約100円)という値ごろ感のある価格を実現した。カタログもサービス開始当初からレコード会社大手(4大メジャー)すべての楽曲を取りそろえた。購入した楽曲を自由にコピーできる、ゆるい制限のDRM(著作権保護機能)を採用した。